新学期も近いためか、この度、学校医を担当させて頂いている小学校から「小中学生の
コンタクトレンズ使用」に関する質問を頂きました。
Q:小中学生にコンタクトレンズは良くないのでしょうか?
Q:小中学生はコンタクトレンズの使用は可能でしょうか?・・・等
外来でも、よく質問される事項ですので回答を作成しました。
私見も含まれますが、近視のお子様のいる方々のお役に立てればと思います。
文書では、なかなか回答が難しい面もありますが下記に掲載させて頂きます。
【回答内容】
小学生にコンタクトレンズは「良くない」とは一概に言い切る事は出来ませんが、
一般的に、その様に言われている事の理由としては:
- 年齢的にコンタクトレンズの脱着が1 人で出来るか否か
- コンタクトレンズのケア(装着時間の厳守、清潔管理等)が1 人で出来るか否か
- ファッション感覚で使っていないか否か
- コンタクトレンズが医療器具である事を理解しているか否か
上記4点に関しては児童個人の理解、性格の問題もあると思います。また御家族の
ご協力も必要になると考えます。
医学的に問題な事は:
- 長期、長時間使用で角膜(黒目)の細胞が減る可能性が高くなる。
角膜の細胞が減る事により、将来的に眼科的手術が必要な疾患に罹患した際に
角膜障害を起こしやすくなる(角膜内皮障害による水泡性角膜症など) - アレルギー性結膜炎やドライアイ等の合併症を引き起こしやすい。
- 手洗いが不充分でコンタクトレンズの脱着をすると学校保健法に指定されている目の感染症に罹患する確率が高くなる。
該当疾患:流行性角結膜炎、咽頭結膜熱(プール熱) - 誤装用や、衛生管理が出来ない事により角膜潰瘍などの眼疾患になりやすい
例)(1)細菌性角膜潰瘍、(2)真菌性角膜潰瘍、(3)アカントアメーバによる角膜炎等
これらに感染し重篤化すると、永続的に角膜の白濁が残り、視力障害の原因に
なりえる。場合によっては角膜移植などが必要になる場合もある。
上記などが考えられます。然しながら、この点は小児に関してだけでは無く、大人にも
言える事です。
※逆にコンタクトレンズが必要な場合もあります。
- クラブ活動などの運動で眼鏡では危険がある場合。
- 視力の左右差が激しくて眼鏡では眼が疲れる場合(不同視)。
- 乱視が強く、眼鏡では矯正視力が充分に得られない場合。
- 逆さまつげから角膜を守る為に医療用にコンタクトレンズを使用し、逆さまつ毛
による角膜炎防止の為にコンタクトレンズを装用する場合もある。 - 円錐角膜の治療として進行予防にハードコンタクトレンズの使用が必須となる。
一概に「コンタクトレンズは良くない」とは言えませんが、コンタクトレンズ作成の際
の最大の条件は「万が一の際に、生活に支障の出ない眼鏡は持っている」事だと思います。
誤装用で角膜炎、角膜潰瘍などを起こして来院される方々に治療の為に「コンタクトは
中止する様に」とお伝えたした際に「眼鏡を持っていない」と答える方が多いからです。異物感を感じた際に見えないからと言って、無理をしてコンタクトレンズを装用する事が、眼疾患を重症化させる要因になるからです。
児童の方でも、上記理由でコンタクトレンズが生活上必要であると判断した場合や、眼科的治療としてコンタクトレンズが必要と判断した場合には当院でも処方をしています。
然しながら、シッカリと脱着練習を受けて頂き、自身一人で脱着が可能な場合に限ります。
また薬剤同様に用法・用量(この場合はコンタクトレンズのケア、及び決められた装着
時間の厳守等でしょうか)を守って頂ける事が重要となると思います。
以上簡単ですが小中学生のコンタクトレンズの可否に付き回答をさせて頂きました。
みなみ野眼科クリニック 平成31 年2 月21 日