眼疾患と症状 「こんな症状はありませんか?」

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第11回:運動会シーズン到来!注意すべき眼の外傷(危険はご家庭内にもあります!)

投稿日:2013年9月23日(月)

つい先日までの猛暑が嘘の様に、季節は突然「秋」となり、運動会シーズンを迎えました。
運動会を安全に楽しむための一助になればと考え、今回は眼の外傷の種類と症状を、また実際に眼外傷を受けてしまった場合、異物が眼に入ってしまった場合の注意事項に関して記載致します。

★眼外傷:意外に危ない眼外傷★

1)眼科的鈍的外傷(主に強い打撲)

▼眼球殴打、エアガン・サッカーボール等による外傷が、この部類に入ります▼

【注】特にサッカーボール等による外傷は、見た目には大したことが無くても

意外に重症なケースが多く、注意が必要です!!

①視束管骨折:眼自体はぶつけていなくても眼の周囲、特に眉毛の外側部を強く打撲した場合に起こります。眉毛の外側を強く打った後は、片目ずつ見て、見え方に変化が無いかを確認してください。
直後に極度の視力低下を訴える様であれば、緊急性が高い疾患です。

【症状】突然の視力低下・視野欠損・鼻出血を伴う事も多い

②眼窩吹き抜け骨折:眼自体はぶつけていなくても、眼の周囲を強くぶつけたりした際に眼球を取り囲む眼窩壁という骨の一部にヒビ・骨折が起こる事により種々の症状を引き起こします。眼の動きに制限が出る場合があります。

【症状】特に「足や膝が目の周囲の骨に強くぶつかった」後に複視(モノが二重に見える)事や、「鼻を強くかんだ後に目の周りが急に膨らんだ・腫れた」等の症状が出れば、この疾患を強く疑います。

③網膜振盪症(もうまくしんとうしょう):眼球打撲による網膜の一過性の浮腫(むくみ)

【症状】「ぶつけた直後に見えない部分や暗い部分があったが少しずつ見える様になってきた」等の一時的な視力低下や視野欠損。無症状の事もあり。

④外傷性虹彩炎:打撲による虹彩(茶目)の炎症

【症状】充血・鈍痛・視力低下

⑤前房出血(ぜんぼうしゅっけつ):外傷による隅角(ぐうかく)の損傷による前房内への出血(図1・2参照)

(注)受傷直後には出血が無くても、24時間以内に出血する可能性もあり注意深い経過観察が必要です!

【症状】充血・鈍痛・視力低下・程度によっては吐き気・頭痛
程度によっては数年後に緑内障になる可能性あり。

⑥外傷性高眼圧症:虹彩炎や出血等によって眼圧が高くなる。前房出血には高率に合併。

【症状】:充血・鈍痛・頭痛・吐き気・視力低下

⑦眼底出血・硝子体出血・網膜裂孔・網膜剥離(図2参照)

【症状】視力低下・飛蚊症・視野欠損等。初期は無症状の事もあり。

前房出血

図1:前房出血の前眼部写真
★虹彩(茶目)の前に血液が沈殿している状態★
角膜(黒目:実際には透明)と虹彩(茶目)間を「前房」と呼びます。
出血の為、茶目や瞳孔が明確に見えません【図2も参照】
クリックにて拡大

外傷による様々な眼の障害

図2:外傷による様々な眼の障害のイメージイラスト(眼球断面図)
★この断面図を左正面から観た状態が【図1】となります★
クリックにて拡大

 

2)眼科的鋭的外傷

ⅰ)突き目(植物の葉の先等による):

植物(特に葉っぱの先)には強毒性の細菌が多く、重篤な角膜潰瘍になる場合があります。初期には異物感程度ですが、2日目などに突然重症化し、強い充血や痛みを起こします。重症化する前の早期の抗生剤の点眼治療の開始が必要です!。

ⅱ)眼の異物(鉄片・木の実・スクラブ等):角膜異物・結膜異物・眼内異物

眼に何か入ったと思ったら、絶対にこすらない事が大切です。迅速な眼科受診をお奨め します。特に飛び込んだ鉄片異物は角膜に刺さっている事が多い傾向にあります。
時には鉄片が角膜を突き破って眼内異物となり、下記記載 ⅲ)の穿孔性眼外傷になっている事もあります。

【症状】異物感・痛み・充血・涙目・その他

ⅲ)穿孔性眼外傷(せんこうせい眼外傷):

ご家庭では、ハサミ、ガラスの破片(窓ガラス)、ペン先等の鋭利な物による外傷が原因になる事が多い傾向にあります。

眼の構造物である角膜、強膜等の全層が切れてしまっている状態(裂傷)をいいます。

角膜裂傷・強膜裂傷⇒緊急手術が必要になります。

【症状】視力低下・痛み・温かい涙の様なモノが流れる・瞳孔が丸くない。
その他、多数の症状

★この可能性がある際には絶対に目をこすったり、押したりしてはいけません!。

穿孔性眼外傷であれば、眼の内容物が外部に漏れてしまうからです。また二次感染 の可能性が高くなってしまいます。

昔、自動車のシートベルトが必携でなかった時代には、交通事故でフロントガラスに顔から突っ込み、角膜・強膜をガラス片が貫通し、眼の中が「ガラス片だらけ」というケースが多くみられましたが、最近はシートベルト着用・エアバッグ等の普及により減少しています。

 

3)物理的外傷:

紫外線等による外傷(電気性眼炎または紫外線性角膜炎)

電気性眼炎:俗に「雪目」と呼ばれたりもしています。紫外線によって黒目の表面がただれて(表層角膜炎)、目の充血・痛みがでます。紫外線の強い場所、たとえばスキー場、海水浴場、高山などでは注意が必要です。また紫外線の多い職場、例えば殺菌灯を使用する場所や溶接業で長時間にわたって紫外線をあびてしまう事によって同様の症状が出ます。予防するには、「サングラス等の遮光眼鏡を使用する事」や「長い庇(ひさし)の付いた帽子をかぶる事が大切です。

 

4)化学的外傷:

酸・アルカリによる眼外傷・・・(危険は身近にあります!)

主に角膜炎による痛みや充血が主体ですが、中には「アルカリ外傷」等、適切な早期の対処や治療をしなければ失明に及ぶ場合もありますので注意が必要です。

 

★一般家庭にあるアルカリ性物質★

カビ取り剤・漂白剤は強いアルカリ性です。 他には換気扇用洗剤・パイプクリーナー・アルカリ性と記載のある「トイレ用洗剤」や「白髪染め」も危険です。また一般家庭には、通常は置いていないと思いますが、昔は運動会のライン引きに使用されていた「消石灰」や「生のコンクリート」もアルカリ性なので何らかの目的で使用される方は要注意です!。

★アルカリ外傷に関しては特に重要ですので下記に詳細を記載いたします★

熱傷や酸による外傷に比べ、アルカリ性の物質による眼外傷は予後が悪い事が多い傾向にあります。

理由として

酸性の物質は角膜(黒目)や結膜(白目・強膜)の表面にタンパク質の凝固した膜を作る事により比較的、眼の奥には浸潤しづらいのですが、これに対しアルカリ性の物質はタンパク質を溶かしながら眼の奥へ奥へと浸潤する傾向にあるので酸よりもはるかに危険です。その為、時間が経てば奥の方までアルカリが浸潤し高度の障害をきたします。

本来は透明である角膜(黒目)が白く濁ったり、上下のまぶたが癒着して眼が開かなる事もあります。

 

【初期の対処・治療が最も重要!】

これらの場合の緊急処置は、にかく眼科医受診よりも前に、少しでも早く大量の水で目を洗うことに尽きます。水道の蛇口に目を近づけて流水で10-15分以上かけて目を洗うようにして下さい。洗面器に入れた水に顔を付けて目を開けたり閉じたりでは効果は弱いので、とにかく蛇口にホースを付けてでも、痛くても我慢しながら目に入ったモノを流水で流し出し、とにもかくにも洗いまくる事が予後を決定すると言っても過言ではありません。その後速やかに眼科医の診察を受ける事が重要です。

当院では「強アルカリによる外傷」と判断した場合には少なくても3リットルの生理食塩水で洗眼をする様にしております。その後の容体を診てから薬物による治療を行います。重症例では入院が必要になる事もあります。

また、どの様な成分の薬品を眼に入れたかという事が非常に重要ですので、充分な洗眼後に受診される際には、眼に入った薬品類の解説書や能書(主にペーハーの記載のある書面等)を御持参下さい。患者様ご自身のご協力も大いに治療に役立ちますので是非とも宜しくお願い申し上げます!(了)

 

追記:外来で患者様からコラムや本シリーズのご感想を頂くと本当に嬉しくなります。今後、掲載記事などに御意見・ご感想・リクエスト等がございました際には忌憚なくお申し出ください。

9月21日(土)から本日23日(月)午前まで東京(新宿)にて開催されました第24回日本緑内障学会に鋭意、参加してきました。学会で得ました最新情報は今後の外来診療の糧に致したいと思っております。

 

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医院情報

医院名
医療法人社団 幸乃会
みなみ野眼科クリニック
診療科目
眼科
診療内容
一般眼科・小児眼科・神経眼科・特殊眼科
電話番号
042-632-5888
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