眼疾患と症状 「こんな症状はありませんか?」

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第4回:眼の奥が痛い「眼精疲労?」

投稿日:2013年3月21日(木)

外来に「パソコンの見過ぎか、眼精疲労で眼の奥が痛い」と訴えて来院される患者様がいます。

眼精疲労・・・この言葉(病名)は、あらゆる眼科疾患や「眼の周囲の疾患」も否定されて初めて付く病名(除外診断名)と考えています。今回は私自身の経験談を交え、解説させて頂きます。

私は、最初に「何か悪い病気が隠れていないか」を念頭において診察します。

まずは問診が大事です!。

1)症状はいつからなのか。

症状が急で、明確な日からであれば、悪い病気を強く疑います。

2)頭痛・吐き気、全身倦怠感 等を伴うか。

3)既往歴(過去にかかった病気)はどの様なものがあるか。

4)最近、全身症状で他に変わった事が無いか否か(特に1カ月以内の発熱など)。

5)現在治療中の病気、処方されている薬の有無。

6)歯の治療はしていないか。

7)症状は一日のどの時間帯に多いか、又は、症状が強いか。

例)朝から眼の奥が痛いのか?パソコンを長時間観た後、読書後に多いのか?

8)最近、眼鏡を変えてないか否か。・・・・・等を聞いています。

通常は眼の病気があるかを調べる為、視力検査・眼圧検査・瞳孔検査(左右の大小の比較、光に対する反応=対光反応等を診ます)・眼底検査・眼位検査(斜視や斜位がないか)・眼球運動検査等を行います。

また眼鏡を使用している方は、お手持ちの眼鏡が合っているかも調べます。

眼の奥の痛みを伴う眼自体の病気「器質的疾患」としてはドライアイ、斜視、斜位、白内障、緑内障、眼球運動障害(外転神経麻痺等)、視神経炎初期(※注1:下記に詳細例記載)、虹彩毛様体炎、他の炎症性眼疾患 等が挙げられます。これらがある場合は更なる精密検査をすすめ、確定診断後に治療を開始します。

また眼に病気(器質的疾患)は無くても「眼鏡が合っていない事」「乱視」「老眼の初期」「ストレスによる疲労」「パソコン・携帯画面等の見過ぎ(VDT症候群・IT症候群)」や「三叉神経痛」等によって眼の奥が痛くなる事もあります。

これらが原因と考えた際には「眼の機能的な障害」と考え、眼鏡の度数変更を含め、いろいろな対症療法を考えます。

また精神安定剤や睡眠導入剤を内服する事で、眼のピントが合わせにくくなり(=調節不全)眼の奥の痛みを訴える事もあります。その際は内服の中止や漸減を心療内科等の主治医と相談する様にお伝えしています。

※上記のいずれにも当てはまらない場合は更に、もう一度問診を振り返ります。

「症状の発症が急であり、発症日がハッキリと言える場合」逆に「非常に経過の長い場合」には眼自体の病気以外にもいろいろな疾患を考えなければなりません。

過去に副鼻腔炎(蓄膿症)や脳内の疾患(特に炎症性疾患)を患っていないか。

この1か月の間に38℃以上の発熱性疾患を患ってないか等を詳細に問診します。

「眼の奥が痛み」の訴えで来られた患者様に眼科一般検査で異常が認められなかった場合には、他の医療機関にて一度、頭頸部の画像診断してもらうようお奨めしております。その結果、割と多い確率で見つけられるのが副鼻腔炎です。頻度は低いですが脳腫瘍が見つかった例もあります。

過去に長引く鼻炎や蓄膿症を患った事のある方、歯の治療中(特に上の歯)の方は、「熱性疾患にかかった事」「ストレス」「疲労」「二次感染」等によって副鼻腔炎の急性発症・再発・増悪が引き起こされ、眼の奥が痛いと言って来られる方が多い傾向にあります。「自分は耳鼻科にかかっているが一度も言われた事が無い」と言われる患者様が多いのですが、副鼻腔と呼ばれるのは耳鼻科領域で診断のつく上顎洞だけではなく、顔面には他にも洞がある為、原因不明の眼の奥の痛みの際には副鼻腔(蝶形骨洞、前頭洞、篩骨洞)を含め、脳内疾患を除外する為にも頭径頸部の画像診断(CT、MRI)は必須と考えます。

 

【視神経炎について】

私が過去に経験した「前日からの急な片眼の奥の痛み」から始まり、後日に急激な視力低下をおこした視神経炎(視神経乳頭炎・球後視神経炎:上記注1記載)の患者様の例を紹介させて頂きます。
全例「昨日から急に片眼の奥が痛い」と言って外来を訪れた小学生~中学生の患者様です。
1)初診日の眼科的一般検査では全て異常を認めず、原因がハッキリしない!。
「眼の奥の痛みの原因がハッキリしないですし、昨日の今日ですので1週間後くらいに再診して下さい。それまでにも急に見えない等、何か変わった事があれば直ぐに受診して下さい」とお伝えしました。その3~5日以内に痛みを訴えていた眼の急激な視力低下を訴え再来となり、初診日の視力は両眼共に(1.2)と良好でしたが、視力低下を訴えて再来になった日には、眼の奥の痛みを訴えていた眼の視力がレンズを入れて矯正しても、手を振っているのがやっと判る程度(手動弁)にまで低下しておりました。初診日には綺麗だった視神経乳頭は真っ赤に腫れ上がっており、視野異常もきたしていた為「視神経乳頭炎」と診断し、入院の上、原因の精密検査及び治療となりました。(2症例)

2)「前日からの急激な眼の奥の痛み」を訴えて初診となった小学6年生の男の子でした。初診日の矯正視力は両眼(1.2)であり、他の眼科的検査でも異常は認められませんでしたので同様の説明をした上で経過観察としました。2日後に「眼の奥の痛みを訴えていた眼の視力低下」で再来になった際の矯正視力は0.02(眼鏡をかけても、0.02しか見えない!)と病的な視力の低下を認めました。この患者様に行った眼底検査では視神経乳頭に見た目は異常なしでしたが、眼に光を当てても瞳孔の反応異常(小さくなりにくい。小さくなるスピードが遅い=対光反応の減弱)を認めたため、緊急の視野検査を行ったところ中心部に比較的大きな黒い暗点(中心暗点)が検出され「球後視神経炎=眼球自体より後ろにある視神経の炎症」と診断がつきました。重症と判断し、入院の上、更なる原因の精密検査の後に治療を開始となりました。(1症例)

私が発症初期から診察に携わった視神経炎の患者様は3例とも3週間以内に38℃以上の発熱を伴う風邪症状(先行感染)があり、その後の精密検査にて幸いにも脳内疾患等は無く、ウイルスが体内に残っていた為に数週間後に視神経を犯したと思われる患者様達でした。因みに全員、入院・加療の後に元の視力に回復して元気に退院されました!

 

日常の診療では、それ程多い疾患ではありませんが、大学病院勤務時代には神経眼科専門外来があった影響もあり、「視神経炎の疑い」で全国各地の大学病院眼科や眼科開業医の先生方から紹介されて来られる方の数は相当数にのぼりました。原因は様々で、中には多発性硬化症等の難病の方も多数いらっしゃいました。若い方に多い病気です。

この様な経験をもとに、急に眼の奥が痛い=球後痛(眼球の後ろが痛い)と訴えてきた患者様には、その日の眼科的検査で異常が無くても「視神経炎の初期の可能性」は必ずお話ししています。
眼の奥が痛いと言う訴え程、「眼科医泣かせ」の症状は無く、本当にいろいろな可能性を考え慎重に診察しなければならない症状と今なお考えています。

 

文責:藤田

 

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眼科
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